大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和62年(家)1290号 審判 1987年3月12日

申立人 鳳恭夫

事件本人 張依林

主文

事件本人が申立人の養子となることを許可する。

理由

1  申立人は主文同旨の審判を求めた。

2  一件記録によると次の事実が認められる。

(1)  申立人(昭和9年4月3日生)と鳳八千代(以下八千代という。)は昭和48年5月10日婚姻した夫婦である。八千代は昭和12年12月2日台湾で出生し中国籍を有していたが、昭和51年3月15日我が国に帰化した。

(2)  事件本人は、八千代を母とし張海仁を父として昭和35年5月16日台湾で出生し中国籍を有している。八千代と張海仁は当時婚姻関係にあつたが昭和44年ころ離婚し、事件本人は、その少し後から昭和58年ころまで張海仁に台湾において育てられ、同年7月から10月まで観光ビザで来日して母八千代及び申立人の下で暮し、昭和59年2月9日からは留学ビザで再度来日し、八千代及び申立人方に同居し、日本語専門学校、歯科技工士専門学校に通学し今日に至つている。

(3)  申立人は事件本人との養子縁組を希望し、八千代及び事件本人もそれを希望している。

3  そこで検討するに、本件においては、申立人及び事件本人の双方が東京都に住所を有すると認められるから、我が国に国際裁判管轄権があり、かつ当裁判所にその管轄がある。

次に、本件に関する準拠法は法例19条1項により、父たる申立人については日本法、子たる事件本人については中華民国法となるところ、両国法に照らし本件養子縁組はその要件に欠けるところはなく、かつ、相当と認められる。

なお、日本民法による配偶者の実子を養子とし、あるいは成年を養子とする場合には裁判所の許可を要しないが、中華民国法によるといずれの場合にも裁判所の認可を得なければ養子縁組の効力が認められない。しかし、我が国の家庭裁判所は未成年の養子縁組等の場合にその相当性を判断して許可を与える機関であつて、我が国の家庭裁判所における許可制度はつまるところ中華民国法における裁判所の認可制度とその趣旨を同じくするものといえる。したがつて、裁判所による認可制度のない我が国においては、家庭裁判所の許可をもつて中華民国法にいう認可に代えることができると考える。

そうすると、本件養子縁組許可の申立は実体的にも手続的にも相当であり、これを認容すべきである。

4  よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 山名学)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例